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誰かがいるから、自分に向き合える

更新日:202209021000


【あそこであげなこつ】再犯防止から考える

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【仮釈放の身元引受人に】
 「仕事としてではなく、人として関わっています。本音で話してもらうために私も自分をさらけ出します」。30年にわたりホームレス支援や更生保護(文末に説明あり)を行う「久留米越冬活動の会」の事務局長、奥忍さんはこう話します。現在、刑務所を出所した男性、新田さん(仮名)の身元引受人になっています。新田さんは数年前、窃盗で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けました。執行猶予期間中に再び窃盗で逮捕され、2年2カ月の実刑に。令和2年に収監、満期まで3カ月を残し令和3年6月に仮釈放されました。
 「仮釈放は身元引受人が居ることが条件なんです。母が引受人になるはずでしたが、直前に断ってきました。それを知った忍さんが引き受けてくれたんです」と新田さんは振り返ります。
【再犯の背景にあった「孤立」】
 新田さんは「母から突然拒否され、正直裏切られたと感じたっすね。もう縁を切ろうかってくらい思いました」と話します。「仮釈放を返上してやろうか」とも。自暴自棄になるのを踏みとどまれたのは、刑務所で受けた回復プログラム「TC」の経験も大きかったそう。同プログラムは受刑者がグループになり、他人の事例を通して自分の罪と対峙。問題行動の解消や誤った思考への気づきを目指します。
 再犯に至った背景を振り返り、新田さんは話します。「昔は弱みを見せたり頼ったりするのは、とにかく恥だと思いよったんです。実の父親から刃物を向けられた時も、金も家も無く友人の家に転がり込んだら『お前いつ出ていくの』と言われた時も、どんな時も「助けて」とは言わんやった。言っちゃいかんって感じかな、恥と思いよったけん。金がないのも恥。それを誰かに頼るのも恥。それなら窃盗の方がましやろって。当時は一人で抱えていっぱいいっぱいで、自分を振り返ることとかできんやったです」。ところが「TCでいろんな人と向き合って対話して、価値基準が徐々に変わったんです。それまで人の目ばっかり気にしとったけど、自分の問題や壁に向き合う大切さに気付いたかな。本当の恥は違うんやってことにも」。
 後に母親に手紙を書き、本音を伝えたそうです。「裏切りだと感じたことを素直に書きました。それに対する返事で、母の葛藤を初めて知りました。この一件で裏切られるつらさも痛感したし、改めて自分の犯した罪を認識できたかもしれん」。
【自分と向き合う時間、出所後も】
 出所後、同会が用意したワンルームに入居した新田さんは、刑期の満了後の自立に向けてアルバイトに励んでいます。仮釈放直前、忍さんに宛てた手紙に『まだあなたを信用できない』の言葉がありました。「会ったこともないとに協力してくれる。関係が駄目になって仮釈放が危なくなっても、正直な気持ちを伝えんと、って考えて」と話します。忍さんは「その言葉は私には、か弱い叫びに思えました。逃してはいけないサインと感じた」そうです。
 「刑期満期までの時間、とにかく話す時間を大切に」と考えている忍さん。毎日彼の出勤を見送り、帰宅時にも顔を合わせます。「人を通してしか自分のことが見えないことは多いと思う。自分を振り返る時間や本音を出せる関係は、厳しい現実と向き合う出所後にこそ必要なんですよ」。

 人を通して自分を見る―。
 TC、母親との関係、忍さんの存在。全てが新田さんにとって、自分と向き合う大切な機会です。
(担当・フトシ)
【用語説明】更生保護とは、犯罪をした人や非行のある少年の社会での再出発を援助することで立ち直りを助け、再犯を防ぎ、非行をなくしていくこと。

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