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WEBコラム【第13話(最終話)】障害ではなく”困った”に気付いて

更新日:202403251524


シリーズ「みんなで生きる、みんなが活きる」【第13話(最終話)】

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 誰にも、できることとできないことがある。できることができない時もある。「障害のある人もない人も、“みんながうまくいく”ための関係をつくりたいんです」と話すのは、視覚障害(弱視)のある長谷部寿子さんです。

“目が見えない、見えにくい”。視覚障害を児童が体感

 子どもたちにさまざまな人の思いを知る機会を作ろうと、久留米市社会福祉協議会は昭和53年から福祉教育を行っています。障害のある人などを、市内の小・中学校に講師として派遣します。依頼は年間40件程あって、長谷部さんはその内10件程度を担っています。

インタビューに応じる長谷部さん

インタビュー中の長谷部さん。見えない・見えにくい人や家族のサポートをする団体「心眼ハート♡あいず」の代表として、さまざまな活動を行っています

 2021年1月27日、長門石小学校4年生を対象に行われた授業も長谷部さんが担当しました。「つながり合う命」をテーマに、初めてのオンライン開催。体育館に集合した児童に、長谷部さんは画面越しに話しかけます。
 「私は未熟児網膜症という病気で、右目は全く見えず、左目だけがわずかに見えます。右目は子どもの頃のままだから、大きさが違うよね。外見が原因でいじめられたこともありました」。自身の障害の説明から授業は始まりました。
 「みんな、目を閉じてみて」と長谷部さん。児童は座ったまま目を閉じます。「手を目に当てると暗くなるよね。離すと明るくなるのが分かるよね。『視覚障害』といっても、今みたいに明るさだけは分かる人も居るんだよ」と、障害は一人一人状態が違うことを、体感してもらいます。

ロービジョン体験の一コマ

手を筒状にして狭い視界を体験。視力があっても視野が極端に狭いと、不自由さを感じることを知ってもらいました

 授業では質問の時間も設けられました。「家の中で物につまずいたりしないのですか」という問いに対し、「私の家のルールは『床に物を置かない』こと。ランドセルやバッグはひもの部分が足にかかって危ないからね。あと、危ない物や良く使う物は決まった場所に置くとか、いろんな工夫をしています」と長谷部さんが答えます。

白杖を見せて説明する長谷部さん

テレビ会議アプリ「Zoom」越しに自分の白杖を見せる長谷部さん。「次の機会には、実際に触ったり、使ってみたりしてほしいですね」

誰でも一瞬で“困る”側に。そこに気付ける感性を持って

 ある児童の「どんな時に助けてほしいですか」という質問が、長谷部さんが伝えたい本質に迫りました。「命に関わる場面は、日常にたくさんあるんだよ。例えば駅のホームや横断歩道がそう。そういう場面に出会ったら、すぐに声をかけられるように意識を持ってほしいと思います」と長谷部さん。最も伝えたいことは、障害者だからということではなく“困っている人に目を向けよう”ということ。「みんなの家族や友達にもそんな時はあるよね。それに気付ける感性がとても大切です」と説明します。

質問する長門石小の児童

画面越しに質問する秋山そよさん。「誰にでも命に関わることが身の周りにあるのだと知り、小さな子にも声をかけていきたいと思いました。長谷部さんに会って、いろいろ聞いてみたいな」と感想を話しました

できないことは頼る。得意を生かして「みんなで幸せに」

 「”目が見えない、見えにくい”からとあきらめるのではなく、私にできないところはできる人の力を借りるようにしています。」と話す長谷部さんは今年、自身の団体の活動で、新たなイベントづくりに挑戦しました。
 2021年3月7日、視覚障害のある人の立場から防災を考えるイベント「備えあいフェスタ2021」を開催しました。防災に関連する部局の市職員や社会福祉協議会職員、防災落語家や社会福祉士の資格を持つ防災士、眼科医などさまざまな人が協力したことで、幅広い企画が実現。オンラインと会場の合計で85人が参加し、参加者の満足度も高いイベントとなりました。
 長谷部さんの好きな言葉は“みんな一緒”。「それぞれの得意を生かして、みんなで幸せになれればと思っています」。

備えあいフェスタで話す市職員

備えあいフェスタのリアル会場の様子

みんくるに設営された会場。長谷部さんを中心に市職員、社協職員がそれぞれの立場から、災害時や日常の備えに欠かせない視点や情報を出し合いました

可能性に気付くために大切な“想像力”

 長谷部さんは活動でいろんな人と会って、長谷部さん自身が気づかされることもたくさんあったと言います。例えば、聴覚障害とか精神障害など、外見に現れにくい障害はあまり気付いてもらえない。人によっていろいろな状態があるのに、『視覚障害=見えない』と一括りにされるなど、障害ごとの特性を知らない人もまだまだいます。「障害のある私たちとそうでない人の“当たり前”の隔たりは大きい。それではうまくいくはずがないですよね」。

長谷部さんのインタビューの一コマ

同じような障害を持った人が、スマートフォンを操作していたら『目は見えているじゃないか』と言われたという話を聞いたという長谷部さん

 そこで大事になるのが“想像力”だと、長谷部さんは思っています。「障害のことを全部知ることは難しい。でも、人と接したときに違和感があったら『もしかしたら自分が知らない何か理由があるのかも』と思えるとうまくいくんじゃないでしょうか。同時に困っている側が『困っています』と発信することも大事。誰もが支える側にも支えられる側にもなる。どちらからも言い合えるようになれば良いですよね」。
 いろんな人の思いに触れ、誰にでも起こり得る「困った」を意識するようになる。それは自分が困ったときにも役立つはず。福祉教育は、障害者や高齢者のことを知るためだけなく、 “想像力”を養う大切な場になっています。

質問を考える児童

質問を一生懸命考える児童。「できるだけ自分で考えてもらうようにしています。自分で出した答えは忘れないでしょう」と長谷部さん

(WEBコラム「みんなで生きる、みんなが活きる」終わり)


この動き「くるめ支え合うプラン」ではどの取り組み?

今回の話題は、支え合うプランに掲げる13の取り組み項目中「福祉への理解を深める」に該当します

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