トップ > 計画・政策 > 人権・同和問題・男女平等 > 人権啓発 > 共に生きる(広報紙) > シリーズ【54】遺族になり22年今も苦しみは続く
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更新日:2025年11月01日 09時00分
大学生の娘を殺害された経験を基に、被害者家族の心情や二次的被害、命の大切さを伝える活動を行っている米村州弘さんに聞きました。
米村州弘さんのプロフィール
犯罪被害者遺族自助グループさくらの会の代表。学校や企業、警察署などで被害者家族の心情や命の大切さを伝える講演活動を行う
今から22年前、当時大学2年生だった次女が、インターネットでたまたま知り合った男に殺害され、山中に遺棄されました。最愛の娘との突然の別れで家族は失意の底に。もちろん殺したのは加害者だと頭では分かっているし、怒りは消えません。でも、加害者と出会うきっかけになったパソコンを与えたのは私だと、今も自分を責めています。
事件後、マスコミはあらぬことを勝手に報道しました。事実とは違うと説明し、1週間後にようやく修正されましたが、事件から数年たっても誤解している人がいて。最初の誤報が拡散し、定着してしまう怖さを思い知りました。
事件から3日後に自分の店を再開すると、マスコミから「よく仕事ができますよね」と心ない言葉を向けられました。家族や従業員の生活も守らなければならない状況だったので、その言葉にとても傷つきました。妻も、職場で「頑張ってください」と優しく声をかけられる度に苦しみ、「娘を亡くした私はどう頑張ればいいの」と涙する日々が続きました。
事件からだいぶ時がたちますが、我が家ではいまだに誰ひとり心から笑いません。孫が誕生した時、幸せを少し取り戻せると期待しましたが、かえってつらさが増すことに。次女を幸せにしてあげられなかった悲しみが押し寄せてくるのです。これが私が今、歩んでいる道です。
家族を失い、悲しみが癒えるには時間がかかります。それでも被害者やその家族、遺族の暮らしが続くよう、周りの人は今まで通り接してほしいと思います。