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第9回 循環型社会形成の推進に向けて

更新日:202112241600


第9回 循環型社会形成の推進

我が国は、元来「もったいない」という考え方のもと、モノを大事にしてきた文化でありましたが、20世紀後半の高度経済成長に伴い、次々と新しい製品が市場に出されるようになり、その結果、モノを大量に生産し、大量に消費し、大量に廃棄する社会へと変貌していきました。こうして大量生産・大量消費型の経済社会システムにより、経済的な発展を享受した一方で、大量の廃棄物を生み出す大量廃棄型の経済社会システムが形成されました。これにより、地球上の限りある資源やエネルギーを大量消費するとともに、大量の廃棄物を排出することで、天然資源の枯渇、環境の悪化、廃棄物処分場の不足など様々な問題を生起するようになりました。
これらの問題を解決するためには、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することが求められています。
「循環型社会」とは、廃棄物等の発生を抑制し(ごみをなるべく出さず)、廃棄物等のうち有益なものは資源として活用し(ごみをできるだけ資源として使い)、適正な廃棄物の処理(使えないごみはきちんと処分)を行うことで、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り減らす社会のことです。
今回は、循環型社会形成の視点を紹介したうえで、循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みとなる法律として制定された「循環型社会形成推進基本法」の趣旨と、その要点、及び「循環型社会形成推進基本計画」について解説するとともに、循環型社会形成の推進方策について概説します。

1 循環型社会形成推進の視点

我が国は、廃棄物問題が深刻化し、廃棄物の発生量の高水準での推移、リユース、リサイクルの一層の推進の要請、及び廃棄物処理施設の立地の困難性と不法投棄の増大という問題に対処するために、廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進するための基盤を確立し、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」の形成に向けて実効ある取組を推進する必要があります。
「循環型社会」とは、第1に製品の製造、流通等の生産段階や消費・使用の段階における廃棄物等の発生を抑制(リデュース)し、第2に使い終わったものでも繰り返し使用(リユース)、第3に再使用出来ないものでも資源として再生利用(リサイクル)し、第4にリサイクル出来ずかつ燃やさざるを得ない廃棄物を焼却する際には発電や余熱利用を行い(熱回収)、第5に処分する以外の手段がない場合は適正に処分(適正処分)することによって、天然資源投入量の抑制を図るとともに、環境への負荷が出来る限り低減される社会です(図1 参照)。

循環型社会の姿
循環型社会とは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わるものとして提示された概念です。
この法律の立案に携わった時、この法律が何故必要なのかを理解するキーワードは「もったいない」という言葉であり、モノを大事に使うという日本古来の文化的精神が、循環型社会の形成を考える際のベースになる概念であると考えました。

2 循環型社会形成推進基本法の趣旨

これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し、「循環型社会」を形成するため、廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物処理法の改正、各種リサイクル法の制定等により拡充・整備が図られてきています。また、循環型社会の実現を推し進めるための基本的な枠組みとなる法律として、「循環型社会形成推進基本法」が、2000年5月26日に成立し、6月2日に公布(平成12年法律第110号)され、翌2001年1月から完全施行されています。
循環型社会形成推進基本法では、循環型社会の形成の基本原則や、国、地方公共団体、事業者の責務などが規定されています。国民についても、製品をなるべく長く使うことや再生品を使用することなどの責務があると規定されています。
また、廃棄物を適正かつ循環的に利用・処分しなければならない責任を負うとの「排出者責任」が規定されており、さらに、製品の生産者が生産段階だけでなく、廃棄された後の製品の回収やリサイクルについて一定の責任を有するとする拡大生産者責任の原則が規定されています。この考え方の下で、個別物品のリサイクル立法などが行われています(図2 参照)。循環型社会を形成するための法体系
また、この法律に基づいて、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府に「循環型社会の形成進基本計画」の策定を義務付けています。

3 循環型社会形成推進基本法の要点

  1. 形成すべき「循環型社会」の姿を明確に提示
    形成すべき「循環型社会」の姿は、まず製品等が廃棄物等となることを抑制し、次に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが確保されることにより実現される、「天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減された社会」としています。
  2. 法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義
    法の対象となる物を有価・無価を問わず「廃棄物等」とし、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけ、その循環的利用の促進を図ることとしています。これは、廃棄物処理法では無価物を対象としており、価格がつけば廃棄物とならないとしていることを回避するためです。
  3. 処理の「優先順位」を初めて法定化
    適正な物質循環の確保に向け、循環資源の循環的な利用及び処分の原則を定め、対策の優先順位を一番目に発生抑制、二番目に再使用、三番目に再生利用、四番目に熱回収、五番目に適正処分と初めて法定化しました。
     
  4. 国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化
    循環型社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者及び国民が全体で取り組んでいくため、各主体がどのような責務を負っているのかを明確にしています。特に、事業者・国民の「排出者責任」を明確にするとともに、生産者が、自ら生産する製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原則を確立しました。
  5. 政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定
    循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府に「循環型社会形成推進基本計画」の策定を義務付けています。循環型社会形成推進基本計画を閣議決定したときは、国会に報告すること、計画は5年ごとに見直しをすること、国の他の計画は循環型社会形成推進基本計画を基本とすることなどが定められています。

4 循環型社会形成推進基本計画の策定

「循環型社会形成推進基本計画」は、循環型社会形成推進基本法第15条第2項の規定に基づき策定されています。計画の内容としては、(1)施策の基本的方針、(2)政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、(3)そのほか、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項について定めることとされています。
第1次循環型社会形成推進基本計画は2003年3月に策定され、第2次計画は2008年3月に、第3次計画は2013年5月に策定され、最新となる第4次計画は2018年6月に閣議決定されました。
第4次計画では、「多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化」や「適正処理の更なる推進と環境再生」といった7つの柱ごとに将来像や指標、取り組みが設定されており、国が2025年までに実施する施策が示されています。
第8回で説明した「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月策定)は、第4次循環型社会形成推進基本計画を踏まえて策定されました。同戦略では、3R+Renewable(リデュース、リユース、リサイクル+バイオマスプラスチックなど再生可能資源への代替)を基本原則に、2030年までにワンウェイプラスチック(使い捨てプラスチック製品)を累積で25%排出削減することや、2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインにすることなどがマイルストーンとして掲げられています。

5 循環型社会形成の推進方策

  1. 2Rの取組がより進む社会経済システムの構築
    今後、世界的に資源制約が強まると予想されるなかで、循環資源の質を高める取り組みを推進する必要があります。質を高めた資源循環の取り組みとは、3Rのうちリサイクルより優先順位が高いリデュースとリユースの推進や、資源希少性や再現性に重点を置いたリサイクルの高度化を推進することです。
    日常の生活においても数多くのモノを消費していますので、生活の中で出来ることが色々あります。例えば、詰め替え出来るアイテムを使ったり、手入れをして一つのものを長く使ったりするなどの取り組み(リデュース)により、資源の使用量や廃棄物の量を削減することが出来ます。また、古着を購入する、壊れてもすぐに捨てずに修理して使うなど、モノを繰り返し使用する(リユース)ことによって、廃棄物の削減や資源の循環につながります。
    このため、2Rがより進む経済社会システムの構築を目指して、リユース品の性能保証など消費者が安心してリユース品を利用できるような環境を整備すること、リサイクルを行いやすくするよう原材料の表示、部品のユニット化などの製品設計段階における取り組みを促進すること、などが挙げられます。
  2. 循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けて
    大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊など様々な環境問題にも密接に関係しています。資源・エネルギーや食糧需要の増大や廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」への移行を目指すことが世界の潮流となっています。
    循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。また、循環経済への移行は、企業の事業活動の持続可能性を高めるため、ポストコロナ時代における新たな競争力の源泉となる可能性を秘めており、現に新たなビジネスモデルの台頭が国内外で進んでいます。
  3. 循環型ビジネスモデルで競争力と環境保護の両立を目指す欧州
    環境問題への関心が高いヨーロッパでは、様々な取り組みが進んでいます。例えば、EU理事会は2019年5月に、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案(「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」案)を採択しました。ストローやカトラリーなど一般的に利用されている使い捨てプラスチック製品が禁止対象です。
    そのほか、EU加盟国は(1)プラスチックボトルの回収率を、2029年までに90%にする。(2)プラスチックボトルのリサイクル材料含有率を、2025年までに25%、2030年までに30%にする目標を掲げています。
    また、EUは2015年12月に「循環型経済パッケージ」を発表しました。持続可能な低炭素社会を実現させるため、資源の利用効率を高めて循環型経済へ移行するための行動計画を掲げたのです。さらに2020年3月には最初の行動計画の成果を踏まえた新しい行動計画を発表しました。製品の設計と生産に焦点を当てて、資源を可能な限りEUの経済活動圏内にとどめることを目標に掲げています。例えば、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の普及において重要な蓄電池(バッテリー)は、資源集約型の産業構造の中でも特に循環型モデルへと移行しやすいとみて、新たな規制枠組みの構築が推進されています。

おわりに

2050年を見据えた循環型社会を展望する時、我が国の社会構造の人口減少・少子高齢化が経済活動や廃棄物発生量にも大きく影響することをまずもって考える必要があります。
人類の生存を脅かす地球温暖化などが進行している現在、世界から地域にわたって人の健康や生態系に対するリスクが十分に低減され、「循環」・「脱炭素」・「自然共生」の各分野が統合的に達成されることを目指していかなければなりません。
持続可能な社会の実現に向け、循環型社会、脱炭素社会、自然共生社会に向けた取組を統合的に展開することが重要です。
循環型社会の形成は、このための重要な取り組みであり、自然との共生を図りながら、人間社会における炭素、水、窒素も含めた物質循環を自然、そして地球の大きな循環に沿う形で健全なものとし、持続的に発展する社会の実現を図るようにしなければなりません。例えば、環境負荷の低い静脈物流システムの構築、枯渇性資源の使用量の抑制、住宅等を長期間社会で使用することの推進、自然界からの新たな資源採取を抑制、生物多様性の保全に配慮した再生可能な資源の持続可能な利用の推進などです。
循環型社会の形成を推進し、国民一人ひとりが幸せを実感できる社会、物質の面、精神的な面の双方において豊かである社会を築き、健全で恵み豊かな環境を保全し、将来の世代に引き継いでいくことを目指して、行動することが求められています。

藤田 八暉
久留米市環境審議会会長
久留米大学名誉教授

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