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第8回 プラスチック資源循環促進法と循環型社会形成の推進

更新日:202112011700


第8回 プラスチック資源循環促進法と循環型社会形成の推進について

プラスチックは、その有用性から、幅広い製品や容器包装にあまねく利用されている現代社会に不可欠な素材である一方で、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチック資源循環を促進することが緊要の課題となっています。
プラスチックごみの発生を減らし(Reduce)、繰り返し使うこと (Reuse) で、ごみとして燃やす際に出るCO2の排出量を減らすことができ、地球温暖化対策の第一歩となります。そして資源としてリサイクル(Recycle)することで、海洋に流れ出るごみの量を減らすことにも繋がります。
プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るライフサイクル全般で、あらゆる主体のリデュース、リユース、リサイクル、素材代替の取り組みを包括的に促進する「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下「プラスチック資源循環促進法」という)」が2021年6月に制定され、これを受けて同法の施行に必要な事項について、中央環境審議会と産業構造審議会との合同会議において審議されてきましたが、2021年11月22日に同法の政省令、告示の内容が取りまとめられました。
「プラスチック資源循環促進法」は、2022年4月1日から施行されることになり、施行に向けて急ピッチで準備が進められています。「プラスチック資源循環促進法」は、我々の生活に深い関わりのある法律でありますので、同法の概要について概説し、同法が循環型社会形成の推進に果たす役割について理解を深めたいと思います。

1 プラスチック資源循環戦略の具体化

プラスチックの資源循環については、大きく次の施策が進められています。
第一に、「プラスチック資源循環戦略PDFファイル(272キロバイト)このリンクは別ウィンドウで開きます」(2019年5月策定)の具体化です。「プラスチック資源循環戦略」では、3R+Renewableの基本原則と、(1)2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制、(2)2025年までにプラスチック製容器包装及び製品のデザインをリユース又はリサイクル可能なデザインに、(3)2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリユース又はリサイクル、(4)2035年までに使用済プラスチックを100%リユース、リサイクル等により有効利用、(5)2030年までにプラスチックの再生利用を倍増、(6)2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入という、野心的なマイルストーンを目指すべき方向性として掲げています。
本戦略を具体化するため、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会及び産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループの合同会議における審議の結果を受け、2021年1月に中央環境審議会から「今後のプラスチック資源循環施策のあり方についてPDFファイル(173キロバイト)このリンクは別ウィンドウで開きます」意見具申されました。
この意見具申に則り、プラスチックの資源循環を総合的に推進するべく、2021年3月9日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が第204回国会に提出され、衆参両院の全会一致で同年6月4日に可決成立し、6月11日に公布(令和3年法律第60号)されています。
第二に、「プラスチック資源循環戦略」の実現に向け、より持続可能性が高いバイオプラスチックへ転換することを目指し、バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進を図るため、バイオプラスチック導入に向けた基本的な方針や生産設備・技術開発支援、政府率先調達等による需要喚起等の必要な施策を整理した「バイオプラスチック導入ロードマップPDFファイル(2085キロバイト)このリンクは別ウィンドウで開きます」が2021年1月に策定されています。「バイオプラスチック導入ロードマップ」に基づき、バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進を進めていくとしています。

2 プラスチック資源循環促進法の概要

「プラスチック資源循環促進法」は、国内外におけるプラスチック使用製品の廃棄物をめぐる環境の変化に対応して、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度を創設等の措置を講ずることにより、一層のプラスチックに係る資源循環の促進等を図ることを目的としています。
多様な物品に使用されているプラスチックに関し包括的に資源循環体制を強化し、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進するための措置を講じようとするものです。
プラスチックごみの発生を減らし(Reduce)、繰り返し使うことで(Reuse)、ごみとして燃やす際に出るCO2の排出量を減らすことができ、地球温暖化対策の第一歩となります。そして資源としてリサイクル(Recycle)することで、海洋に流れ出るごみの量を減らすことにも繋がります。
(1)基本方針の策定
プラスチック使用製品廃棄物及びプラスチック副産物の排出の抑制、回収、再資源化等、プラスチックに係る資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するため、次の事項等に関する基本方針が策定されます。

この基本方針は、海洋環境の保全及び地球温暖化の防止を図るための施策に関する法律の規定による国の方針との調和が保たれたものでなければならないとされています。

(2)個別の措置事項
「プラスチック資源循環促進法」では5つの事項に関する具体的な措置が盛り込まれています。
(ア)環境配慮設計指針の策定
製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を国が策定し、指針に適合した製品であることを認定する仕組みが設けられます。これによりプラスチックを扱うメーカーはこの指針に沿って製品の設計や製造が求められます。
また、指針に適合した認定製品を国が率先して調達する(グリーン購入法上の配慮)とともに、リサイクル材の利用に当たっての設備への支援を行います。
(イ)使い捨て(ワンウェイ)プラスチックの使用合理化
飲食店やコンビニなどで提供されるプラスチック製の使い捨て(ワンウェイ)プラスチックカトラリーを削減する仕組み作りが設けられます。
具体的には次に記載してある【提供方法に関するもの】と【提供する製品に関するもの】の合計7つの対応が求められます。
しかし、実施できるものから取り組みを始めたり、複数を組み合わせたりするなどの対応方法は自由となっています。

  1. 【提供方法】消費者に必要・不要の意思確認をする。
  2. 【提供方法】不要とした消費者にポイントの還元などをする。
  3. 【提供方法】消費者に有償で提供する。
  4. 【提供方法】提供した消費者に繰り返し使うよう促す。
  5. 【提供する製品】繰り返し使うことができる製品の提供。
  6. 【提供する製品】環境配慮品や持続可能な商品など工夫された製品の提供。
  7. 【提供する製品】商品やサービスに適したサイズの製品の提供。

プラスチック製品を年間5トン以上扱う事業者は、利用量の削減などの対策が義務づけられ、取り組みが不十分な場合や利用量を減らさない事業者には主務大臣の指導や助言が入り、それでも変わらない場合は勧告、公表、命令などの措置も盛り込まれます。
(ウ)市区町村の分別収集、再商品化の促進
各自治体が行うプラスチック資源の分別収集を促進するために「容器包装リサイクル法」にあわせた仕組みを使い、再商品化を可能にします。
また、市区町村と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画を作成し、主務大臣が認定した場合に、市区町村による選別・梱包などを省略して再商品化事業者が再商品化を実施することが可能となります。
(エ)製造業・販売事業者等による自主回収の促進
プラスチック製品を取り扱う製造・販売事業者等が使用済み製品を自主回収する計画書を作成し、この計画書を主務大臣が認定した場合、通常は廃棄物処理法に基づく認可が必要なところを、認定事業者は不要になり自主回収しやすくなります。
(オ)排出事業者の排出抑制・再資源化の促進
プラスチックごみを排出する事業者が排出量の抑制やリサイクルなどの取り組むべき判断基準を策定され、基準以上のプラスチックごみを排出して、改善にも取り組まない事業者には主務大臣の指導や助言、それでも利用量を減らさない場合は勧告・公表・命令などの措置も盛り込まれます。
排出業者が再資源化計画書を作成し、主務大臣が認定した場合、通常は廃棄物処理法に基づく認可が必要なところを、認定事業者の廃棄物処理法の業許可は不要になり、リサイクルを実施できるようになります。

3 プラスチックに係る資源循環の促進等の基本的方向

プラスチックの資源循環に向けては、事業者、消費者、国、地方公共団体等のすべての関係主体が参画し、相互に連携しながら環境整備を進めることで、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する施策を一体的に進め、相乗効果を高めていくことが重要です。そのため、次の役割分担の下で各関係主体が積極的に取り組むものとされています。

このように資源循環の高度化に向けた環境整備を進めることで、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を実現するとともに、2050年カーボンニュートラルを実現するために必要不可欠な循環経済への移行を戦略的に進めるとしています。

おわりに

大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊など様々な環境問題にも密接に関係しています。
資源・エネルギーや食糧需要の増大や廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」への移行を目指すことが世界の潮流となっています。循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。
循環経済への移行は、企業の事業活動の持続可能性を高めるため、ポストコロナ時代における新たな競争力の源泉となる可能性を秘めており、現に新たなビジネスモデルの台頭が国内外で進んでいます。我が国においては、循環型社会形成推進に関する各種制度の下、行政・経済界・国民等の各主体の協働により3R及び循環経済の実績を積み上げることがさらに期待されるところです。
また、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、廃棄物・資源循環分野では、一般廃棄物の焼却や埋立処分に伴う直接的な温室効果ガス排出の抑制のほか、収集運搬過程における燃料使用や、中間処理施設等の稼働に伴う電力使用等によるエネルギー起源CO2等の排出抑制を総合的に講じていく対策が求められています。これら対策の具体的な取組の進展に向け注力することが重要な課題です。

藤田 八暉
久留米市環境審議会会長
久留米大学名誉教授

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