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第8回 気候変動対策における緩和、適応及びロス&ダメージ

更新日:202211290900


第8回 気候変動対策における緩和、適応及びロス&ダメージについて

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が2022年11月6日(日曜日)から11月20日(日曜日)にエジプト(シャルム・エル・シェイク)において開催され、気候変動対策の各分野における取り組みの強化を求めるCOP27全体決定「シャルム・エル・シェイク実施計画」が採択されました。同決定文書は、2021年のCOP26全体決定「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲しつつ、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で、締約国の気候変動対策の強化を求める内容となっています。
緩和については、COP26全体決定「グラスゴー気候合意」の内容を引き継いで、パリ協定の1.5度目標に基づく取り組みの実施の重要性を確認するとともに、2023年までに同目標に整合的なNDC(温室効果ガス排出削減目標)を設定していない締約国に対して、目標の再検討・強化を求めることが決定されました。
適応については、COP26で設置が合意された2年間の作業計画である「世界全体の適応目標に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」について、本年の作業の進捗を確認するとともに、最終年となる2023年に向けた作業の進め方について決定されました。
ロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失及び損害)については、ロス&ダメージ支援のための措置を講じること及びその一環としてロス&ダメージ基金(仮称)を設置することが決定されました。
今回は、気候変動対策における緩和、適応及びロス&ダメージの意味と取組内容について解説します。

地球温暖化と気候変動

地球温暖化と気候変動の二つの用語がよく使われています。地球温暖化とは人間活動に起因して大気中に放出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン等)によって、地球が暖められる現象です。一方、気候変動とは通常は数十年かそれよりも長い期間持続する、気候状態の変化を指しています。国連気候変動枠組条約では、「地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるものをいう」としています。
二酸化炭素(CO2)は、温暖化の要因である温室効果ガスの代表的なもので、その大気中濃度は産業革命が始まった1750年以降、急激に増えています。私たちは石油や石炭などの化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出し、経済を成長させてきました。その結果、大気中のCO2濃度は1750年に比べて40%も増加しました。大気中のCO2濃度が増加すると、海洋に取り込まれるCO2の量も増え、海洋の酸性化を引き起こしています。
温暖化によって私たちは、かつて経験したことのないような気候の変化に直面しています。極端な高温や強い台風などの異常気象が各地で発生し、私たち人間の生命や財産に甚大な被害をもたらしたり、生物を絶滅の危険にさらしたりしているのです。

気候変動・温暖化対策

気候変動・温暖化への対策には、大きく分けて、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らす「緩和(mitigation)」と、すでに生じている、あるいは将来予測される気候変動の影響による被害を回避・軽減させる「適応(adaptation)」の2つがあります。
気候変動を抑えるためには、緩和が最も必要かつ重要な対策です。IPCC第6次評価報告書(WG1)によると、世界平均気温は、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、産業革命以前と比べ1.5度および2度を超えると報告されています。
緩和の効果が現れるには長い時間がかかるため、早急に大幅削減に向けた取り組みを開始し、それを長期にわたり強化・継続していかなければなりませんが、最大限の排出削減努力を行っても、過去に排出された温室効果ガスの大気中への蓄積があり、ある程度の気候変動は避けられません。
観測記録を更新するような異常気象が、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。激しい大雨が毎年のように水害を引き起こし、災害級の暑さによりひと夏で1,000人以上の死者が出た年もあります。気候変動によって、こうした異常気象が将来は頻繁に発生したり深刻化したりすることが懸念されており、変化する気候のもとで悪影響を最小限に抑える「適応」が不可欠となっています。

緩和策と適応策

気候変動による人間社会や自然への影響を回避するためには、その原因物質である温室効果ガス排出量を削減する(または植林などによって吸収量を増加させる)「緩和策」を最大限実施することが必要です。
しかし、気候変動の影響は気温の上昇、農作物の品質低下、大雨や暴風による災害、熱中症など様々な形で既に現れており、残念ながら今後も影響は大きくなる見込みです。現在から将来の気候の変化とそれが及ぼす影響を知り、悪い影響をできるだけ抑えるため、科学的な情報をもとに、計画的に変化に備えていくために「適応策」が必要となっています。
既に起きている気候変動の影響、さらに将来予測される影響から私たちの生活や身体を守るためには、防災や高温に強い農作物の開発など、被害を最小限に抑える適応策も進め、「緩和」と「適応」の両輪で取り組んでいくことが重要です。

気候変動の緩和策・適応策の関係

適応への取り組み

温室効果ガスを削減して「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える」という目標が明確になっている緩和と異なり、適応には世界共通の明確な目標が定められていません。これは、気候変動の影響が地域の地理的、経済的、社会的な条件などによって様々な形で顕在化することから、取るべき対策も国ごとに異なるためです。このため日本では、国全体が気候変動の影響を回避し低減することを目的として「気候変動適応法」が2018年に制定されました。「気候変動適応法」では、各地域が自然や社会経済の状況に合わせて適応策を実施することが盛り込まれています。

ロス&ダメージ(損失と被害)

気候変動による損失と被害とは、適応できる範囲を超えて発生するものを指します。国連気候変動枠組条約事務局のレポートでは、「人間及び自然システムに悪影響を及ぼす、途上国における気候変動に伴う影響の実際の発現又は発現の可能性」と定義されています。具体的には、異常気象等による被害や、海面上昇に伴う土地の消失・移住・コミュニティの崩壊などが想定されています。
国連気候変動枠組条約には、この「適応できる範囲を超えて発生する気候変動影響」が出てきた場合にどうするかが書かれていません。そのため、島嶼国を中心とする途上国は、このような損失・被害の救済のための国際的な仕組みを作るべきだと強く主張してきました。しかし、この途上国の主張に対し、先進国は強い抵抗を示してきていましたが、COP27では、ロス&ダメージ支援のための措置を講じること及びその一環としてロス&ダメージ基金を設置することが決定されました。

藤田 八暉
久留米市環境審議会会長
久留米大学名誉教授

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