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第3回 地球温暖化対策の国際的取組

更新日:202106280930


【第3回】地球温暖化対策の国際的取組について

近年の人間活動の拡大に伴って温室効果ガスの排出量が増大し、大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることによって、現在の地球は過去1400年で最も暖かくなっています。この地球規模で気温や海水温が上昇するなどの現象、すなわち地球温暖化は、平均的な気温の上昇のみならず、異常高温(熱波)や大雨・干ばつの増加などのさまざまな気候の変化を伴っています。その影響は、生物活動の変化や、水資源や農作物への影響など、自然生態系や人間社会にすでに現れています。将来、地球の気温はさらに上昇すると予想され、水、生態系、食糧、沿岸域、健康などでより深刻な影響が生じると危惧されています。
これらの地球温暖化に伴う気候の変化がもたらすさまざまな自然・社会・経済的影響に対して、温室効果ガスの排出を出来るだけ早期にゼロにし、地球温暖化の進行を抑えるため、世界各国との協力体制を構築し、総力を挙げて取り組んでいかなければなりません。
今回は、国際社会が協力して地球温暖化対策を進めていくための土台となる国際条約にターゲットを当てたいと思います。地球温暖化に関する国際条約の取り組みは、1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」を起点に始まりました。この条約は、世界のほぼ全ての国が参加しており、地球温暖化対策に関する国際的な取り組みの礎となっています。次に、同条約に基づき先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けた「京都議定書」が1997年に採択され、京都議定書の後継として、2020年以降、先進国・途上国を問わず世界の全ての国が温暖化対策に取り組む国際協定である「パリ協定」が2015年に採択されています。本稿では、これら地球温暖化に関する国際条約の成立の経緯と内容を中心に説明します。

1.気候変動枠組条約の採択

1980年代後半から、地球温暖化防止のための取り組みの必要性が認識されるようになり、1992年5月に開催の「国連環境開発会議」(地球サミット)に間に合わせるべく国際交渉が精力的に行われ、同年4月の国連総会において、「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC; United Nations Framework Convention on Climate Change)(以下「気候変動枠組条約」という。)」を採択しました。その後、各国の署名・批准を経て1994年に発効しました。
気候変動枠組条約は、究極的な目的として、温室効果ガスの大気中濃度を自然の生態系や人類に危険な悪影響を及ぼさない水準で安定化させることを掲げています。また、全締約国の義務として、温室効果ガス削減計画の策定と実施、そして排出量の実績公表が課されています。さらに、日本などの先進国の追加義務として、温室効果ガスの排出を2000年までに1990年の水準に戻すとの目的で温暖化防止のための政策措置を講ずること、途上国への資金供与や技術移転を行うことが課されています。これは条約の交渉において、中国をはじめ開発途上国から、地球温暖化の責任は、産業革命以降、温室効果ガスの排出量を増加させてきた先進国にあり、排出削減の義務は先進国がまず負うべきであるとの強硬な主張を受けて、共通だが差異ある責任(Common But Differentiated Responsibilities)という考えに基づいて、先進国は途上国に比べて重い責任を負うとされているものです。

気候変動枠組条約のポイント

  1. 温暖化防止のための政策措置を講ずること
  2. 排出量などに関する情報を締約国会議に報告すること
  3. 途上国への資金供与、技術移転を行うこと
    1.2.の措置、報告を、温室効果ガスの排出を2000年までに1990年の水準に戻すとの目的で行う(数値は努力目標)。

気候変動枠組条約に加盟している国々は、1995年から毎年、世界の地域を順番にめぐって開催される「気候変動枠組条約締約国会議」(COP;Conference of Parties)と呼ばれる国連会議に参加し、国際的な温暖化対策のあり方について、議論や交渉を行っています。以下本稿での「COP」は、気候変動枠組条約締約国会議のことを指します。

2.枠組条約から京都議定書へ

気候変動枠組条約は、枠組条約の名からも想像されるように、この条約自体には、各国の具体的な排出削減義務までは規定されていませんでした。しかし、その後の締約国による協議のなかで、温室効果ガスの濃度の安定化のための具体的な方策が検討され、先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある各国ごとの削減義務を定めることとなり、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で「京都議定書」が採択されました。京都議定書は、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガス削減の数値目標を設定しました。具体的には、先進国全体で、2008年から2012年まで(第一約束期間)に、二酸化炭素、メタンなど6種類の温室効果ガスを、1990年に排出していた量(3種類の気体については、基準年を1995年にすることもできる)よりも5.2%削減するという約束です。日本は6%減らすことを約束しました。また、国際的な協調による排出量の削減を促進する仕組みとしての京都メカニズム等について定めています。この京都議定書は、採択から7年余りをかけて細部の協議が進められ、2005年2月に発効しました。

3.パリ協定採択に至るまで

京都議定書は、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガス削減の数値目標を義務付けたということで画期的でしたが、幾つかの課題を残しました。
まず、その当時最大の排出国であったアメリカが、京都議定書に署名したのですが、大統領が交代したことから批准しなかったことです。また、温室効果ガス排出量削減の数値目標を課したのは先進国だけでしたが、その後、途上国の中でも、特に中国など新興国と呼ばれる国々は、急速な経済成長と共に排出量を増大してきたので、そうした国々でも対策が必要になりました。
気候変動枠組条約に基づく京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)を目前に控えた2007年12月、COP13がインドネシアのバリ島で開催され、気候変動枠組条約の下に全ての締約国が参加する新たな国際的な枠組みを決めるために協議が行われ、難航の末に、地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいく2013年以降の新たな枠組みに関する合意が2009年の締約国会議(COP15)で得られるよう作業を進めることに合意しました。
そこで、アメリカの参加や、途上国の排出量削減を視野に入れた新しい枠組みの創設が、2009年のデンマーク・コペンハーゲンで開催されたCOP15で合意が目指されましたが、残念ながら各国の根深い利害対立を解消できず、その合意に至りませんでした。結果として、各国は、2020年までは、京都議定書の時のように条約で合意した目標ではなく、あくまで自主的な目標や取り組みの下で温暖化対策に取り組むことになりました。
その一方で、もう一度、新しい国際的な枠組みの合意に向けた交渉も、仕切り直しで再スタートしました。京都議定書の後継となる新たな国際合意を目指し、2011年11月に開催されたCOP17において、全ての国を対象とした2020年以降の新たな枠組みを2015年までに交渉を行い、2015年にパリで開催されるCOP21で採択することが合意されました。

4.パリ協定の採択

2015年11月30日から12月13日まで、フランス・パリにおいて、COP21が開催され、全ての国が参加する2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みである「パリ協定(Paris Agreement)」を含むCOP決定が採択されました。パリ協定は、京都議定書の後継となるもので、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。
パリ協定においては、世界共通の長期目標として、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2度より十分下方に抑えるとともに、1.5度に抑える努力を追求することなどが設定されました。また、主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新することが義務づけられるとともに、その目標は従前の目標からの前進を示すことが規定され、加えて、5年ごとに世界全体としての実施状況の検討(グローバル・ストックテイク)を行うこと、各国が共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受けることなどが規定されました。その他、二国間クレジット制度(JCM)を含む市場メカニズムの活用、森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する取り組みの奨励、適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施、先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供することなどが盛り込まれました。
京都議定書では一部の先進国に温室効果ガス排出削減が限られていたのに対し、パリ協定では先進国、途上国を問わず、歴史上初めて全ての国が国情に応じて自主的に参加することを実現した公平な合意として、これまでの歴史を塗り替える大きな転換点となりました。

パリ協定のポイント 

5.パリ協定を踏まえて加速する気候変動対策

パリ協定の発効には55ヵ国以上が批准し、その排出量が世界の温室効果ガス排出量の55%に達する必要がありましたが、採択の翌年2016年10月5日にこの条件を満たし、同年11月4日に発効されました。京都議定書が1997年の採択から発効まで約7年かかったのに比べ、パリ協定の採択から1年未満という異例の短期間での発効です。
パリ協定の発効は、世界全体の温暖化対策が新たな段階に移ったことを意味します。温室効果ガス排出量が世界第1位と第2位である中国とアメリカの排出量を足すと全体の4割近くですが、他方で、我が国より排出量の少ない国の排出量を全て足し上げると全体の4割に達します。世界各国の排出量の割合では、開発途上国の排出量の占める割合が増加するなど京都議定書の締結時と比べて大きく変化しており、パリ協定が掲げる目標を実現するためには、主要排出国に限らず全ての国が削減に向けて努力する必要があります。パリ協定の実効性ある実施に向けて、全世界が協調して取り組みを進めていくことが求められています。
パリ協定の下、EUはもとより、世界全体で2050年までに脱炭素社会を実現するため走り出しています。アメリカも2021年1月に就任したバイデン大統領が、トランプ大統領時代に脱退したパリ協定から一転、復帰することを表明し、気候危機に対処すべく積極的な取り組みを進めています。国内外の有力企業も、気候変動をビジネスにとってのリスクと認識しつつ、さらなるビジネスチャンスとも捉え、さまざまな先導的な取り組みを進めています。国連のアントニオ・グテレス事務総長は、2021年は気候変動との闘いにおいて運命を左右する一年になるだろうと警告しました。
2021年11月1日からイギリス・グラスゴーで開催されるCOP26では、各国が設けた2030年までの削減目標が議題となります。脱炭素社会への転換を目指す「パリ協定」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論します。イギリスのジョンソン首相は、COP26は言葉でなく行動、合意の場でなくてはならず、そのために絶え間ない努力が必要と訴えています。我が国では、菅首相が2020年10月に2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言し、2021年4月に「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていく。」と言明しました。COP26に向けて、世界各国においてさらなる気候変動対策の強化に向けて取り組みが加速しています。

藤田 八暉
久留米市環境審議会会長
久留米大学名誉教授

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