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第2回 地球環境問題

更新日:202106280920


【第2回】地球環境問題について

1.地球環境問題の顕在化

人間の活動が、その範囲や規模の著しい拡大に伴い、世界の各地において環境汚染や自然破壊が生じています。
これらによる影響は、人間が定めた国境線には関わりなく周辺の国や地域にも波及しており、国際的な環境問題として対応が必要とされてきましたが、さらにその影響が地球全体に及ぶオゾン層の破壊や地球の温暖化など地球環境問題が顕在化しています。

2.地球の環境が悪化する原因

地球環境問題の原因の一つは、環境への配慮が十分でないまま人間の活動が余りにも大きく、また高度になりすぎたことにあります。
特に、第二次世界大戦以後は人間の活動が大変なスピードで拡大しています。人間の活動が大きくなればなるほど、環境から多くの物質が資源として利用され、他方では、汚い物質や危ない物質が環境へと捨てられることになります。
かつては、地球の環境は無尽蔵にあるように思われていましたが、大気は対流圏でわずか12キロメートル程度の厚みしかなく、海洋の深さも最大で10キロメートル程度です。このような地球をとりまく薄い膜のなかで人間の活動の影響が出始めたのです。
原因の二つ目は、人間の活動内容が変わってきていることです。例えば、微生物や日光などの自然の働きでは分解しにくい人工の化学物質がたくさん使われ、そして環境へと捨てられていますが、これが環境中に溜って悪影響を及ぼすのです。
このような環境の使い方では、地球環境が悪化してしまうのは必然です。先進国では大規模な経済活動や人工の物質の使用などによる豊饒の影で、また、開発途上国では貧困の陰で、それぞれ環境破壊が進んでいます。無尽蔵と思われていた地球の大気ですら汚れてしまうほど地球の環境はほころびが目立ってきています。

3.地球環境問題に共通する特徴

地球環境問題の特徴は、世界経済が発展し、経済のグローバル化が広範囲に進展する中で、先進国の繁栄追求努力と、途上国の人口増加、貧困からの脱却努力がそれ自体で、あるいは相互に関連し合いながら環境を破壊するという、先進国・途上国の南北間あるいは世界的構造問題の側面を有するとともに、現世代と将来世代との間の資源配分の側面をも有するものであることです。
こうした地球環境問題に共通する特徴は、長い時間をかけて進むプロセスであり、第1にその影響は、国境を越え、ときに地球規模で拡大すること。第2には、個々の地球環境問題が大気や水、生態系の働きや世界経済を通じ相互に結び付きをもっていることです。

4.地球環境問題の対象

地球環境問題は、人類の生存基盤としての有限な環境を守り、次の世代へと引き継いでいくという、人類共通の課題です。
このため、我が国の環境政策は、地球環境問題の顕在化に伴い、従来の国内的な対策を基本とした枠組みから地球環境保全を視野に入れた枠組みへと展開してきています。
政府は、地球環境問題に対応するため、内閣総理大臣が主宰し関係大臣により構成される「地球環境保全に関する関係閣僚会議」を設置し、そこで地球環境問題の対象について決めています。それは、(1)被害・影響が一国内にとどまらず、国境を越え、ひいては地球規模にまで広がる環境問題。(2)先進国も含めた国際的な取り組みが必要とされる発展途上国における環境問題。この(1)、(2)のいずれか、またはその両方を満たす環境問題とされています。
この定義に従い、政府が地球環境問題として対策に取り組むこととしているのは、「地球温暖化」、「オゾン層の破壊」など10分野です(表1参照)。

表1 具体的な地球環境問題
1 地球温暖化
2 オゾン層の破壊
3 海洋の汚染
4 野生生物の種の減少(生物多様性の減少)
5 砂漠化
6 酸性雨
7 森林(特に熱帯林)の減少、劣化
8 有害廃棄物の越境移動
9 開発途上地域の環境の保全
10 国際的に高い価値が認められている環境の保全

5.地球環境問題の概要

次に地球環境問題について、分野ごとに概要を簡潔に説明します。

(1)地球の温暖化
事業活動その他の人の活動に伴って発生する二酸化炭素を初めとする温室効果ガスの排出量が増大し、大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系および人類に悪影響を及ぼします。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書では、世界平均地上気温の上昇、世界平均海面水位の上昇が予測されており(表2参照)、生態系や食糧生産を初め、社会全体に広範かつ深刻な影響を及ぼすことが予測されています。
地球温暖化問題は、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題です。

表2 IPCC第5次評価報告書第1作業部会の主要な結論
1 観測事実
  • 気候システムの温暖化については疑う余地がない
  • 世界平均地上気温は0.85度上昇(1880~2012年)
  • 世界平均地上気温は、1850年以降のどの10年間よりも高温(最近30年の各10年間)
  • 3,000メートル以深の海洋深層においても水温が上昇している可能性が高い(1992~2005年)
温暖化の原因 人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い。
将来予測 今世紀末までの世界平均地上気温の変化は0.3~4.8度、世界平均海面水位の上昇は0.26~0.82メートルである可能性が高い。

(2)オゾン層の破壊
クロロフルオロカーボン(CFC、いわゆるフロンの一種)等の大気中への放出に伴って、成層圏のオゾン層が破壊され、その結果として生じる有害紫外線の地表面への到達量の増大により、皮膚がんの増加等の健康への影響や、動植物の生育阻害等の生態系への悪影響が生じています。
(3)海洋の汚染
船舶からの廃棄物の投棄、陸域からの汚染物質、プラスチックごみの流入等により、世界の海洋のいたるところで、油、浮遊性廃棄物、有害化学物質等による汚染が進行し、水質の悪化、海洋生態系への影響が生じています。
(4)生物多様性の減少
野生生物の種の数は、科学的に明らかにされているものだけで約175万種程度ありますが、野生生物種が生息地の破壊・乱獲等により急速に減少しており、1990年~2020年の間に世界で毎年1.7万~5万種の野生生物種が絶滅するなど、生物多様性への影響が危惧されています。
(5)砂漠化
過放牧や薪の過剰採取等により、世界各地で砂漠化が進行しています。現在、全世界で37.5億ヘクタール(地球全陸地の約1/4の面積)の土地、及び9億人(世界人口の約1/6)が砂漠化の影響を受けているとされています。さらに毎年600万ヘクタールものスピードで広がっています。
これは、食糧生産への影響や薪炭材の不足により周辺住民の生活が脅かされるほか、気候への影響も懸念されています。
(6)酸性雨
石油や石炭などの化石燃料の燃焼等に伴い大気中に排出される硫黄酸化物、窒素酸化物等によって雨が酸性化するもので、ヨーロッパ、北米等で、酸性の強い降雨が観測され、森林、湖沼等への被害が起きています。
東アジア地域においても、中国の急速な工業発展に伴って硫黄酸化物等の排出量が増加しており、酸性雨による被害が問題となっています。
(7)森林(特に熱帯林)の減少
非伝統的な焼畑耕作、薪材の過剰採取、大規模な農地への転換、過放牧、不適切な商業伐採等により、例えば熱帯林は毎年1,420万ヘクタール(北海道、四国、九州を合わせた面積)が、この地球上から消失していると推計されています。
森林の減少に伴い、土壌流出や野生生物の生息地減少等が生ずるほか、それによる気候変化等の影響も懸念されています。
(8)有害廃棄物の越境移動
先進国から開発途上国への有害廃棄物の不適正な輸出等により、受け入れ先の国において人の健康や生活環境、自然環境に関わる環境問題が発生しています。
(9)開発途上国等における環境問題
多くの開発途上国では、工業化、都市化の進展等に伴って、公害問題や生活環境の悪化の問題にも直面しています。また、森林の減少等自然資源の不適切な管理に起因する環境問題も発生しており、国際協力による解決が要請されています。
(10)国際的に高い価値が認められている環境の保全
国際的に高い価値があると認められて世界遺産に登録された自然環境のところや、南極地域等の環境については、人類共通の財産として保護するための国際的取組の強化が急務となっています。

6.地球環境問題の解決のために

このような地球環境問題の解決のためには、世界全体での取り組みが必要であり、各分野について国際的な取り組みを進めるため条約等が締結されてきています。また、その条約等を履行するために国内法の整備等が行われてきています。
次回以降、地球環境の保全に向けて、各分野において、具体的にどのような取り組みがされているかについて、主要な分野ごとに回を追って解説していく予定です。

藤田八暉
久留米市環境審議会会長
久留米大学名誉教授

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